CAP NEWS インタビュー VOL.18
渡井 さゆり(わたい さゆり)
NPO法人 社会的養護の当事者参加推進団体 日向ぼっこ 理事長 兼 当事者相談員
選べなかった育ちを越えて
児童福祉施設で生活をしてきて、寂しさを抱えてこなかった人はいないのではないだろうか。
私は現在社会的養護の下で生活された方が気軽に集うことのできる「日向ぼっこサロン」の運営をしている。
見える方の大半は児童福祉施設で子ども時代を過ごした方だ。育ちを肯定的に捉えている方も中にはいらっしゃるが、大半の方が育ちに不遇感を抱いている。
養育者から満たされなかった思いや「どうしてあの時にああ言われたのだろう」、「あんなことをされたのだろう」という理不尽さを退所してからも抱え続けている。
私自身、子どもの頃親に育てて貰えず、児童福祉施設を転々とした。親と愛着関係が築けていなかった私は人に心を開くことができなかった。
施設の職員に対しても、「仕事で面倒を見てくれているのだ」「疎ましく思われないようにしなくては」という思いが先立ち、「守って貰いたい」「自分のことを大切にして欲しい」という、子どもであれば正当なニーズを求めることができなかった。
そして、施設を退所してから、どうして生きていかなくてはならないのか、どのように生きていけばいいのか、わからず苦しんだ。
私は18年間も生きてきたにも関わらず、自分の生を受けとめられてなかったのだ。
児童福祉施設は安全な場所で、食事もしっかりしており、私は体は発育したものの、養育者からの愛情を受け取ることができなかったために、心は発育しなかった。
人と関わることが私にとっては煩わしく、一人で過ごすことが一番気楽だった。しかし、そんな自分がおかしいことも自覚でき、絶望していた。
絶望の淵に、「自分と同じような境遇の人たち同士で支え合うことができれば」と考え日向ぼっこを結成した。2006年春に勉強会を始め、現在は「日向ぼっこサロン」(東京都文京区)を拠点に社会的養護の下で生活していた人たちの〈居場所・相談事業〉(東京都の地域生活支援事業を受託)と当事者の声を社会に発信する〈集約・啓発事業〉を行なっている。
見える方のサポートを通じ得た声を、社会的養護の充実に繋げるべく、行政や現場・市民の方々への発信にも力を入れている。
前述の通り、見える方の大半は育ちに不遇感を抱いている。しかし、そのことを言い訳にして人生を放棄することはできない。
与えられた命を生きていくしかない。私も活動を通じ、徐々に自らの生を受けとめられるようになった。
自分で選ぶことのできなかった育ちに、多くの人が振り回されている。でも、自分で自分を育てられる時期が来れば人生は自分次第である。
選べなかった育ちを越えて、自分らしく生きられるようにお手伝いさせて頂いている。
(CAP NEWS18号<2010年11月発行>より転載)
渡井さんは、2011年1月30日(日)CAPセンター・JAPAN主催「子ども虐待防止シンポジウム“子ども達と明日をつくろう!”」にシンポジストのおひとりとして、ご参加くださいました。
NPO法人 社会的養護の当事者参加推進団体 日向ぼっこ ■http://hinatabokko2006.main.jp/

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